たとえるなら
レストランでの食事体験の全部です。内装や食器(UI)が素敵でも、予約が取りにくい、料理が来るのが遅い、会計が面倒なら「またあの店に行きたい」とは思いませんよね。席に着く前から店を出た後まで、体験のすべてがUXです。
もう少しくわしく
UX(ユーザーエクスペリエンス)は、利用者がサービスを通じて得る体験(experience)の全体を指します。画面が使いやすいかだけでなく、サービスを知って登録するまでの流れ、目的を達成できたときの満足感、困ったときのサポート対応まで、利用者が感じたことすべてが含まれます。
UIとの関係は「部分と全体」です。UIは体験のうち画面まわりの接点を指し、UXはそれを含むもっと大きな概念です。よく引かれる例が「画面はきれい(UIは良い)けれど、手続きが多くて面倒(UXが悪い)」というもの。逆に、見た目は素朴でも、やりたいことが一瞬で終わるサービスはUXが良いと言えます。
体験は、画面を開く前から始まっています。サービスを知る → 登録する → 実際に使う → 困って問い合わせる → 続けるか、やめる——この一本の流れすべてがUXの範囲です。使っている最中の画面がどれだけ良くても、登録に10分かかったり、退会の方法が見つからなかったりすれば、その人の体験は悪いものとして記憶に残ります。
UXが悪いとは、具体的にはこういう状態です。入力を全部終えてから「この形式では登録できません」と言われる。会員登録しないと値段すら見られない。エラーの文言が「エラーが発生しました」だけで、何をすればいいかわからない。どれも画面の見た目とは関係のない、流れとことばの問題です。UXの改善が、デザインの話にとどまらないと言われるのはこのためです。
良くするには、画面のデザインだけでなく、「利用者は本当は何をしたいのか」を深く理解することが必要です。そのために利用者への聞き取りや、実際に操作してもらう様子の観察を行います。作り手にとって当たり前の言葉が通じていない、想定と違う順番で操作している——こうした発見は、机の上で考えているだけでは出てきません。
改善の効果は、感覚だけでなく数字でも確かめます。登録の途中でどれくらいの人がやめてしまうか、目的の操作を終えられた人の割合はどれくらいか、といった指標(KPI)を見ながら、画面や流れを直しては測り直す。「良くなった気がする」で終わらせないのが、仕事としてのUX改善です。
この領域を担うのがUXデザイナーで、企画職やエンジニアと一緒にサービスの根本を考える役割です。ただし、UXは特定の職種だけのものではありません。エラーの文言を書くエンジニアも、問い合わせに答えるサポート担当も、その人の体験を作っている当事者です。
現場での使われ方
「この登録フロー、UX的にどうなんだろう?」
登録の手順が利用者にとって快適な体験になっているか疑問がある、という問題提起です。
「UX改善のために、ユーザーインタビューをやります」
体験を良くする手がかりを得るため、実際の利用者に話を聞く調査をする、という取り組みです。
「UIはきれいなんだけど、UXが良くないんだよね」
見た目は整っているのに、たどり着くまでの手順が多い・迷うといった不満がある、という指摘です。
「このエラーメッセージ、これだと何すればいいかわからないですよね」
文言ひとつも体験の一部だという指摘。UXはデザイナーだけの担当ではないことがよくわかる場面です。
よくある質問
UIとUXはどちらが大事ですか?
どちらも欠かせない関係です。UIは体験を支える大事な部品であり、UXという全体の目的のためにUIを磨く、という関係で捉えるのが自然です。現場でも「UI/UX」とセットで語られることが多いです。
UXデザイナーとUIデザイナーは何が違うのですか?
UIデザイナーは画面の見た目や操作部品を設計し、UXデザイナーは調査をもとに体験全体の流れを設計します。とはいえ会社によって線引きはさまざまで、「UI/UXデザイナー」として両方を担当する求人も多くあります。
UXは数字で測れるのですか?
完全には測れませんが、手がかりになる数字はあります。登録を完了できた人の割合、目的の操作にかかった時間、問い合わせの件数、続けて使ってくれる人の割合などです。数字で当たりをつけ、実際の利用者の声で理由を確かめる、という組み合わせで見ていきます。
エンジニアもUXを考える必要がありますか?
あります。読み込みの速さ、エラー時の文言、押しにくいボタンの反応——実装の細部が体験を大きく左右します。「仕様どおりに作ったが、これでは使う人が迷う」と気づいて声を上げられるエンジニアは、どの現場でも重宝されます。
UXを学ぶには何から始めればいいですか?
身近なサービスを使いながら「今どこで迷ったか」「なぜ面倒に感じたか」を言葉にしてみるのが、いちばん手軽で効果的です。自分の引っかかりを説明できるようになることが、他人の体験を設計する力の土台になります。