たとえるなら
健康診断の数値のようなものです。「健康になる」という目標はそのままでは測れませんが、体重や血圧という数字なら毎日測って変化を追えます。ビジネスでも「サービスを成長させる」という目標を測れる数字に置き換えたもの、それがKPIです。
もう少しくわしく
KPI(ケーピーアイ)は Key Performance Indicator の略で、日本語では重要業績評価指標と訳されます。むずかしく聞こえますが、要するに目標に向かって順調かどうかを測るために選んだ数字のことです。「月間の利用者数」「新規会員の登録数」「解約率」など、チームによって追いかける数字は変わります。
どんな数字が選ばれるかは、そのチームが何で成り立っているかによります。Webサービスなら訪問者数・登録数・継続率・解約率、通販なら購入率や平均購入金額、問い合わせ窓口なら初回返信までの時間や解決率。開発チームが「障害の件数」や「リリースまでにかかった日数」を追いかけることもあります。自分たちの仕事の良し悪しが表れる数字を選ぶのがコツです。
混同しやすいのがKGI(重要目標達成指標)との違いです。KGIが「年間売上をここまで伸ばす」といった最終ゴールを測る数字なのに対し、KPIはそこへ向かう途中経過を測る数字です。もうひとつ区別したいのが指標と目標値で、「解約率」という指標に対して「3%以下にする」という目標値を置く、という関係になります。会話がかみ合わないときは、たいていこの2つが混ざっています。
実務では、期の初めにどの数字を追うかを決め、ダッシュボードに並べて毎日または毎週ながめます。新しい機能を出すときは、作る前に「この機能はどの数字が動けば成功なのか」を決めておき、公開後にその数字で効果を判断します。数字が動かなければ、作ったものを直すか、そもそも狙いがずれていたのかを考え直す——この繰り返しが改善の基本です。
落とし穴の代表は、数字を追うこと自体が目的になってしまうことです。押しやすい場所にボタンを置けばクリック数は増えますが、使う人の役に立っていなければ意味がありません。もうひとつ多いのが、集計の条件がそろっていないまま数字を出してしまい、「その数字、いつからいつまでの分ですか」「退会した人は含まれていますか」と会議が止まるパターンです。
新しく入った人は、まず自分のチームが何をKPIにしているかを聞くところから始めてください。そのうえで、数字の定義(どの期間の、誰を数えたものか)まで確認しておくと、資料を読むスピードが変わります。自分の作業がどの数字につながっているかが分かると、迷ったときの優先順位も自然と決まります。
KPIは一度決めたら変えてはいけないものではありません。サービスが立ち上がったばかりの時期は利用者数を増やすことが大事でも、ある程度広まったあとは続けて使ってもらえているかのほうが重要になります。追う数字が実態と合わなくなってきたと感じたら、変えるべきタイミングです。数字は現実を映す道具であって、現実のほうを数字に合わせる必要はありません。
現場での使われ方
「今月のKPI、達成できそうですか?」
チームで追いかけている数字が、月の目標値に届きそうかという進捗確認です。定例ミーティングの定番の話題です。
「この機能のKPIは何にしますか?」
新しく作る機能の成功・失敗をどの数字で判断するか、あらかじめ決めておこうという議論です。作る前に決めるのが理想とされます。
「そのKPI、分母は何ですか?」
率で示された数字について、何を全体として計算したのかを確かめる質問です。分母がずれていると比較できないため、数字を扱う場面でよく飛びます。
「今期からKPIを継続率に置き換えます」
追いかける数字そのものを見直す、という宣言です。サービスの段階が変わると、大事な数字も変わります。
よくある質問
KPIとKGIの違いは何ですか?
KGIは最終ゴールを測る数字、KPIはそのゴールへ向かう途中経過を測る数字です。たとえば「年間売上」がKGIなら、「月間訪問者数」や「購入率」がKPIにあたります。ゴールだけ見ていても日々の行動は決まらないため、手前の数字に分解して追いかけます。
KPIはいくつくらい設定するものですか?
数に決まりはありませんが、多すぎると何を優先すべきかが分からなくなります。チームで毎週見るものは数個にしぼり、細かい数字は必要になったときに掘り下げる、という形にしている現場が多いです。全部が大事だと言うのは、何も大事にしていないのと同じになりがちです。
KPIとノルマは同じものですか?
違います。KPIは状態を測るための指標で、ノルマは個人に割り当てられた達成義務です。KPIを個人の評価に直結させると、数字を良く見せる工夫のほうに力が向いてしまうことがあるため、チーム全体の状態を知る道具として扱う現場が多いです。
KPIが未達だったらどうなりますか?
まず、なぜ届かなかったのかを分けて考えます。施策の効果が薄かったのか、そもそも目標値の置き方が現実的でなかったのか、外部の要因なのか。原因によって次の打ち手が変わります。未達そのものを責めるより、次に何を変えるかを決めるための材料として使うのが本来の姿です。
エンジニアもKPIを意識する必要がありますか?
意識できると仕事の質が上がります。同じ「直してほしい」という依頼でも、その先にある数字が分かっていれば、より効く直し方を提案できるからです。少なくとも、自分が作っている機能がどの数字を動かすためのものかは、聞いておいて損はありません。