たとえるなら
職人さんへの弟子入りに似ています。弟子は分厚いマニュアルを丸暗記するのではなく、師匠の仕事を大量に見て「こういうときはこうする」という感覚を身につけます。機械学習も、ルールを1行ずつ教え込む代わりに、大量のデータ(実例)を見せて感覚をつかませるやり方です。
もう少しくわしく
AI(人工知能)は、人間のような知的な働きをコンピューターで実現する技術の総称です。そして機械学習は、それを実現する代表的な方法。従来のプログラムは「こういうときはこうする」というルールをすべて人間が書きますが、機械学習では大量のデータからコンピューター自身がパターンを見つけ出します。ルールを書ききれない複雑な問題に強いのが特徴です。
身近な例はすでにたくさんあります。迷惑メールの自動判定、通販サイトのおすすめ表示、スマホの顔認証、写真の自動整理、音声の文字起こし、そして人間と文章でやりとりする対話AI。どれも過去の大量のデータから学んだパターンをもとに、次に来るものを予測しています。データが豊富なほど精度が上がるため、ビッグデータとセットで語られることが多い技術です。
言葉の関係を整理しておくと混乱が減ります。いちばん広いのがAIで、その中に代表的な手法として機械学習があり、さらにその中に人間の脳のしくみをまねたディープラーニングがあります。文章や画像を作り出す生成AIは、このディープラーニングを使って作られたものの一種です。つまり別物が並んでいるのではなく、入れ子になった関係です。会話で「AI」と言われたときに、どの層の話をしているのかを意識すると理解が早くなります。
作る側の流れは、目的を決める、データを集める、使える形に整える、学習させる、どれくらい当たるかを測る、システムに組み込む、という順です。いちばん時間がかかるのは学習ではなくデータを整える工程だとよく言われます。近年は自社で学習させず、出来合いのAIサービスをAPI経由で呼ぶ形も一般的になりました。公開後も、当たらなくなってきたら作り直します。
いちばん多い失敗は、目的を決めずに「AIを入れたい」から始めることです。学習させるデータがない、あっても量が足りない、偏っている——という壁に必ずぶつかります。ほかにも、精度が100%になると期待する、社内の資料を外部のAIサービスにそのまま貼り付けてしまう、出てきた内容を検証せずに公開してしまう、といった事故が起きています。どれも技術以前の、進め方の問題です。
「AIで自動化できない?」と聞かれたら、まず過去の実例がどれだけ残っているかを確認するところから始めてください。人が判断してきた記録が積み上がっていれば見込みがあり、何もなければそこを作るのが先です。生成AIを使うときは、社内で入力してよい情報の範囲を必ず確認し、出てきた内容は自分の目で確かめてから使うこと。この2つで多くの事故は防げます。
AIは万能ではありません。学習したデータに偏りがあれば判断も偏り、もっともらしい間違いを自信たっぷりに出すこともあります。だからこそ現場では、得意なことを任せて最後は人間が確認するという組み合わせ方が大切にされています。何を任せ、どこで人が目を通すのかを設計に入れておくこと。使う側の理解が、そのまま結果の質を左右します。
現場での使われ方
「この作業、機械学習で自動化できないかな」
人間が目で見て仕分けているような作業を、データからパターンを学ばせて自動化できないか、という検討です。学習に使える実例が十分にあるかが最初の論点になります。
「学習に使えるデータ、どれくらい溜まっていますか?」
AIを使う話が出たときに最初に確認される項目です。過去の判断の記録が少なければ、まずデータを集めて溜めるところから始める必要があり、時間がかかる前提で計画します。
「精度は100%にならないので、人が確認する運用にしましょう」
AIの判断には必ず外れが混じる前提で、どこで人が目を通すかを決めておくという提案です。任せきりにせず、確認の手順まで含めて設計する考え方が重視されます。
「社内の資料を外部のAIサービスに入れていませんか?」
入力した情報がどう扱われるかはサービスや契約によって違います。社内で使ってよい範囲が文書で決まっていることが多いので、確認を促す一言として飛んできます。
よくある質問
AIと機械学習は同じ意味ですか?
AIは「人間のような知的な働きをする技術」全体を指す広い言葉で、機械学習はそれを実現する代表的な方法です。現在AIと呼ばれているものの多くは機械学習で作られているため、日常会話ではほぼ同じように使われますが、厳密にはAIのほうが広い言葉です。
生成AIは機械学習とどう関係しているのですか?
生成AIは、機械学習の中のディープラーニングという手法を使って作られたものの一種です。文章や画像、音声などを新しく作り出せる点が特徴ですが、大量のデータからパターンを学んでいるという土台の考え方は、ほかの機械学習と変わりません。呼び名が違うだけで、まったく別の技術というわけではありません。
AIは自分で考えているのですか?
人間のように意味を理解して考えているというより、大量のデータから学んだパターンをもとに「もっともらしい答え」を組み立てています。だからこそ、学んだことのない状況では堂々と間違えます。答えの正しさを自分で保証できないという点が、人との大きな違いです。
AIを導入したいとき、何から考えればいいですか?
「何を判断したいのか」と「その判断の実例がどれだけ残っているか」の2つです。過去に人が判断してきた記録が積み上がっていれば取り組みやすく、何もなければまず集めるところから始まります。道具を先に決めるより、目的とデータを先に確かめるのが順番です。
社内の情報をAIサービスに入れても大丈夫ですか?
サービスと契約の内容によって変わるため、自社のルールを確認してください。入力内容が学習に使われる設定かどうか、法人向けの契約かどうかで扱いが違います。判断に迷う情報は入れないのが安全で、多くの会社が利用できる範囲を文書で定めています。迷ったら自分で決めず、上司に確認してください。