たとえるなら
家を建てたい人に代わって、設計から施工、完成後の点検まで一括で引き受ける工務店のような会社です。施主(お客さまの企業)は建築の専門家でなくても、要望を伝えれば家(システム)が完成します。
もう少しくわしく
SIer(エスアイヤー)は、システムを組み上げる仕事「システムインテグレーション(SI)」を行う会社に、人を表す「er」を付けた和製の呼び名です。お客さま企業から依頼を受け、システムの企画から設計・開発・運用までを丸ごと請け負う会社を指します。英語ではsystem integratorと言い、SIerという形は日本の業界の中だけで通じる言葉です。
銀行の勘定システム、官公庁の手続きシステム、工場の生産管理など、社会を支える大型システムの多くはSIerが作っています。大規模な案件では、元請けのSIerが全体を取りまとめ、開発の一部を協力会社に依頼する多層の分業体制が組まれることも多く、これはこの業界の構造を理解するうえで大事なポイントです。会社ごとに得意な業界や得意な製品があるのも特徴です。
混同されやすい言葉が3つあります。ベンダーは製品やサービスの提供元という関係を表す言葉で、発注した企業から見ればSIerもベンダーの一社です。SES(客先常駐)はエンジニアがお客さまの職場で働く契約の形で、成果物ではなく働いた時間に対して料金が決まります。コンサルは課題の整理や方針づくりが中心で、作る工程まで請け負うかどうかが分かれ目になります。
仕事は引き合いから始まります。お客さまの課題を聞いて提案書と見積もりを出し、他社との比較を経て契約を結ぶ。そこから要件定義・設計・開発・テストと進み、本番で動かして運用と保守に入る——この流れで、ひとつの案件に数か月から数年かかります。契約で決めた範囲の外の作業は追加の相談になるため、依頼をその場で引き受けない慎重さが求められる仕事でもあります。
よく聞く思い込みは「SIerは古い技術ばかり」「自由がない」といった一括りの評価です。実際には扱う技術も進め方も会社と案件によって大きく違い、クラウドや新しい道具を積極的に使う現場もあります。本当の難しさは別のところにあり、お客さまの合意なしには何も変えられないこと、関係する会社や部署が多くて調整に時間がかかることが、慣れるまでの壁になります。
新人がまず身につけたいのは、決まったことを記録に残す習慣です。打ち合わせの内容を議事録にしてお客さまに確認してもらう、これだけで後々のもめごとが大きく減ります。転職を考えている人は、会社の規模より自分が担当する工程と案件の種類を面接で確かめてください。同じ会社でも、要件定義から入る部署と開発だけを担う部署では、毎日の仕事がまったく違います。
言葉としての注意点もあります。SIerという呼び名は業界の内側でしか通じにくく、会社自身は「システム開発会社」「ITソリューション企業」と名乗っていることも多いです。またSIerか自社開発かという二択で語られがちですが、自社サービスも持つSIer、受託も引き受ける自社開発企業と、実際には混ざっている会社が少なくありません。区分のラベルより実際の事業内容を見てください。
現場での使われ方
「前職は大手SIerで金融系のシステムを担当していました」
転職の自己紹介でよく聞く言い回しです。受託開発の会社で、銀行や保険など金融業界向けの案件に携わっていた、という意味になります。金融は特に規模が大きく、堅い進め方を求められる分野です。
「この案件、SIerに発注する?それとも社内で作る?」
システムを外部の専門会社に依頼するか、自社のエンジニアで開発するかを検討する場面です。費用・期間・社内に知見が残るかを比べて決める、企業のシステム投資でいちばん大きな分かれ道です。
「元請けのSIerから仕様の回答が来るまで待ちです」
多層の分業体制では、質問が何社かを経由してお客さまに届くため、確認の返事に時間がかかります。待ちが発生する理由の説明としてよく使われ、急ぎのときは経路を短くできないか相談します。
「SIerといっても会社ごとに全然違いますよ」
扱う業界も技術も進め方も会社差が大きいという指摘です。「SIerだからこう」という一括りの評価をいさめるときに出るセリフです。転職先を調べるときも、会社ごとに確かめる姿勢が役立ちます。
よくある質問
SIerの読み方と意味を教えてください。
「エスアイヤー」と読みます。システムインテグレーション(SI)を行う会社という意味で、お客さま企業から依頼を受けてシステムを企画から運用まで丸ごと請け負う会社を指します。日本の業界内で使われる和製の呼び名で、英語ではsystem integratorと言います。
SIerとベンダーの違いは何ですか?
ベンダーは製品やサービスを提供する会社全般を指す広い言葉で、SIerはそのうちシステムの構築を請け負う会社を指します。発注した企業から見ればSIerもベンダーの一社なので、現場ではシステムの発注先という意味でSIerをベンダーと呼ぶこともよくあります。会社の種類ではなく、誰から見た関係かで呼び名が変わる言葉です。
SIerとSES(客先常駐)は何が違うのですか?
SIerはシステムを完成させて納めることに対して料金が決まり、進め方は請け負った側が決めます。SESはエンジニアがお客さまの職場で働き、働いた時間に対して料金が決まる契約の形です。同じ会社が両方の形で仕事を受けていることもあるため、求人では契約の形まで確認するとよいでしょう。
SIerと自社開発はどちらが良いのですか?
優劣ではなく向き不向きです。幅広い業界の大型案件に関わりたいならSIer、ひとつのサービスを育て続けたいなら自社開発、というように、自分がどんな働き方をしたいかで選ぶのがおすすめです。実際には両方を手がける会社も多いので、区分よりも配属先の仕事内容を見るほうが確実です。
未経験からSIerに入れますか?
未経験者を採用して研修から育てる会社は多く、入り口としては現実的です。ただし会社と配属先によって、学べることも任される工程も大きく変わります。応募するときは研修の内容と期間、配属の決め方、最初に担当する工程を確認しておくと、入ってからの想定違いを防げます。