たとえるなら
サーバーたちが暮らす、超厳重なマンションです。停電しても自家発電で電気は止まらず、部屋は機械に最適な温度に保たれ、入り口では厳しい本人確認があります。住人(サーバー)が快適に働き続けられるよう、建物全体が設計されています。
もう少しくわしく
データセンターは、大量のサーバーを設置・運用するための専用の建物です。中に入ると、サーバーを収めた棚(ラックと呼ばれます)が図書館の本棚のようにずらりと並び、機械の熱を冷ますための空調が休みなく動いています。騒音が大きく、室温は人にとって肌寒いくらいに保たれているのが普通です。人が快適に過ごす場所ではなく、機械が働き続けるための場所として作られています。
特徴は、とにかく止まらないための備えが徹底されていることです。停電に備えた自家発電装置と蓄電池、地震に耐える建物構造、機器を傷めない特殊な消火設備、複数の通信事業者から引いた回線、そして不正侵入を防ぐ厳重な入退室管理。サーバーは動き続けることが仕事なので、その住まいにも最高レベルの備えが求められます。多くの施設は安全のため正確な所在地を公開していません。
「クラウドにデータを保存する」とき、データは雲の中ではなくどこかのデータセンターにある実物のサーバーに入ります。つまりデータセンターは建物そのもの、クラウドはその中の設備を借りる使い方、サーバーは中で動いている1台1台です。自社で買った機器を置く場所として棚だけ借りる形もあり、この場合はクラウドではなくオンプレミスと呼ばれます。
自社の機器を置いている場合、作業のたびに入館の申請をして、身分証を見せて中に入ります。機器の交換やケーブルの作業は現地でしかできないため、日程の調整が必要です。一方クラウドを使う現場では、建物に入ることは一生ありません。代わりにどの地域の施設で動かすかを画面上で選ぶのが仕事になり、この選択がそのまま保管場所の話になります。
見落とされがちなのがデータの置かれる場所です。契約や法律で国内保管が求められているのに、初期設定のまま海外の施設を使っていた——という指摘が監査で出ることがあります。ほかにも、すべてを1か所に集めていて災害でまとめて止まる、入館手続きを忘れて作業当日に入れない、現地作業が前提の運用で復旧に時間がかかる、といった失敗があります。
非エンジニアの立場で関わるのは、たいてい「データはどこに保管されますか」と聞かれたときです。お客さまや社内の管理部門から必ず確認される項目なので、自分で推測せず担当者に確かめて回答してください。「クラウドだから場所は関係ない」という説明は誤りです。見学の機会があれば、一度中を見ておくと言葉の実感がまるで変わります。答えを自分の言葉で説明できるだけで、打ち合わせでの信頼感が変わります。
立地は慎重に選ばれます。地震や水害の危険が小さく、電力と通信回線を安定して引ける場所が候補になります。大量の機器を動かすため電気を多く使い、その冷却にもまた電気がかかるので、省電力や再生可能エネルギーの活用が業界の大きな課題になっています。何気なく使っているサービスの裏側には、こうした建物が確かに存在しています。止まらない建物を、できるだけ少ない電力で動かす——それが今の課題です。
現場での使われ方
「データはどこのデータセンターに置かれるんですか?」
契約や法律の関係で、データが物理的にどの国・地域に保管されるかが問題になることがあります。その確認の質問で、提案や審査の場面でよく出ます。推測で答えてはいけない種類の質問です。
「来週データセンターに入館するので申請をお願いします」
現地でしかできない作業のため、事前に入館の手続きが必要だという連絡です。身分証の提示や立ち会いのルールが施設ごとに決まっており、当日の飛び込みはできません。
「東京と大阪のリージョンに分けて置いています」
リージョンはクラウド事業者が施設を構える地域のまとまりのこと。離れた場所に分けておくことで、災害でまとめて止まる事態に備えているという構成の説明です。
「うちはオンプレミスなので、機器はデータセンターに置いています」
クラウドを借りるのではなく自社で買った機器を使っており、その置き場所として施設の棚を借りている、という構成の説明です。自社の機械室に置く会社もあります。
よくある質問
クラウドとデータセンターの違いは何ですか?
データセンターはサーバーを収容する建物そのもの、クラウドはその中の設備をインターネット越しに借りる使い方です。クラウドサービスの裏側には必ず実物のデータセンターがあります。比べるものというより、建物と借り方という関係だと考えると整理できます。
データセンターの場所はなぜ公開されないのですか?
大量の重要なデータが集まる施設のため、狙われることを避ける目的です。おおよその地域までは公表しても、正確な住所や外観を出さない運営が一般的です。看板を出さず、外から見てもそれと分からない建物になっていることもあります。見学できるのも関係者に限られます。
データセンターの中はどうなっているのですか?
サーバーを収める棚が通路をはさんで並び、床下や天井にケーブルが走っています。空調の音が大きく、人には肌寒いくらいの温度に保たれています。作業用の机や工具は用意されていますが、長時間いる場所ではなく、必要な作業だけを済ませて出るのが普通です。防寒着を持って行く人もいます。
データが海外のデータセンターに置かれると問題になりますか?
業種や契約によっては問題になります。個人情報や公共系のデータは国内保管を求められることがあり、その国の法律が適用される点も論点になります。技術的に動くかどうかとは別の観点なので、案件ごとに条件を確認する必要があります。後から別の場所へ移すのは大変です。
データセンターとサーバールームは違うのですか?
規模と備えが違います。サーバールームは会社の建物の中に設けた機器置き場で、停電や災害への備えは限られます。データセンターはそれ専用に設計された建物で、電源・空調・防犯・回線のすべてが冗長化されています。同じ用途でも、信頼性の水準が大きく異なります。